ドイツの温泉町のほとんどには、土地の名前に入浴、お風呂を意味する「バート」あるいは「バーテン」がついています。例えば「バーデン・バーデン」「バート・ホンブルグ」「ヴィース・バーデン」「バート・キッシンゲン」・・・といった具合です。これらの温泉地の発祥はローマ時代にさかのぼりますが、温泉療養地としても200年の歴史があります。
温泉療養地を、ドイツではクアオルト(Kurort)といい、3つの基本要素からなりたっています。
まず、第一にクアハウス(Kurhaus)。これは療養地の中心となる施設で、療養者のコミュニティセンター的な役割を果たしています。ここではダンス、カジノ、食事、講演会、音楽会などが楽しめますが、原則として治療施設はありません。
二番目にクアミッテルハウス(Kurmittelhaus)という多目的総合治療館が、治療用施設として存在します。ミッテルとは、薬や治療の意味です。ここには浴槽、各種水治療室、泥浴室、吸入療養室、電気・磁気療法室、マッサージ室、サウナ室、各種運動施設、屋内外のプールなどが整備されています。水浴、マッサージ、泥浴など各種水治療法は個々の個室でおこなわれます。
日本のように多人数で大きな温泉浴槽に浸かることは、水着を着用したプールでの運動浴以外にはありません。
三番目にはクアパルク(Kurpark)といわれる公園があります。この公園はかなり広く、その中に前述のクアハウスやクアミッテルハウスが設置されています。自然の景観と地域の特色を生かして、芝生、樹木、草花を配し、遊歩道が整備され、音楽堂や飲泉所も配置されて、人々の憩の場となっています。
療養地では、その中や近接していろいろなスポーツを楽しむ設備があり、また、歩いて体力づくりやリハビリテーションを目的とするテラインクール(Terrainkur)といわれる地形療法が行える歩道が整備されています。さらに療養地ではクリマテラピー(Climatherapy)といって、その土地の気候を利用した気候療法も行われます。
クアハウスは、もともと王侯貴族とブルジョア階級の社交場でしたが、現在では地元民、訪問者らの交流を図る施設です。地元のコミュニティホールとしてコンサートや展覧会も催され、訪れたゲストを飽きさせないプログラムが組まれています。
さて、このようなドイツの温泉療養事情も医療費の増大化や、利用者のニーズに合わせて変化してきています。まず医療保険制度ですが、今までは医師が温泉療養の適応を認めた場合、医療社会保険が適用されて4〜6週間の指定された温泉療養地での療養ができました。治療費、交通費、滞在費も含まれます。しかし現在では最長でも3週間になりました。もうひとつの変化は、「治療、療養型」から「アメニティー、ホスピタリティー、美容と健康づくり、楽しみ、遊び」といった「ウェルネス」といった要素を取り込んだ方向への動きです。最近ではウェルネスに重点を置く施設が増えてきています。ウェルネスには健康保険がきかず、費用は自己負担になりますが、「健康は買うものである」という意識が根底に存在しているようです。この遊び感覚を備えた代表的施設はバーデン・バーデンのカラカラテルメや、バート・ホンブルクのタウナステルメです。
このような利用者を飽きさせないというコンセプトは、クアミッテルハウスにも変化をもたらしているようです。従来の病院イメージから、健康づくりのための施設に雰囲気を変えてきており、例えば、ひとつの個室でも時間を変えて数種類の治療をおこない、利用者を楽しませる工夫がとられています。
参考文献:温泉療養の手帳 (社)民間活力開発機構
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