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種類別入浴法

どんなお湯でも、食事の直前・直後は入浴をさけましょう。食前は胃酸分泌が減少しますし、食後は消化不良を起こす場合もあります。目安として、食前30分、食後1時間は、入浴を控えた方が無難です。また、大量の飲酒時、重労働やスポーツ直後の肉体疲労時、極度の興奮状態も、入浴による急激な血圧変化を起こしやすく、危険です。

1.一般入浴

入浴するには、まず、かけ湯といって、桶で湯を身体にかけ、その温泉の温度や泉質に、身体をならす。いきなり湯に入ると、血管が急激に広がって、血圧が降下するため、脳貧血や心臓発作をおこすこともあり、危険である。足、腰、肩の順にゆっくりとかけ湯を行い、身体の汚れを充分に流してから、静かに入浴する。
湯の温度は、通常、高温(40〜43度)、微温(30〜37度)に設定されている場合が多いが、中にはその中間を設けているところもある。

高温浴の効能としては、新陳代謝を高め、鎮静作用もあることから神経痛やリウマチ、腰痛などが上げられる。微温浴は、血圧への影響や、心臓への負担も少ないことから、高血圧やノイローゼなどの神経系統の鎮静によいとされている。
入浴時間は、泉温以外に、泉質や体調などにより変わってくるが、
高温の湯で5〜6分、微温の湯で30〜60分程度。回数は1日2〜3回くらいが適当である。
湯治など、療養目的で長期間滞在する場合は、体調をみながら少しずつ時間・回数を増やしていく。

2.打たせ湯

2〜3mの高さから滝状に落下する温泉を、患部に当てて刺激するという温圧療法のひとつで、『打たせ湯』『滝の湯』『湯あんま』などと呼ばれる。設備としては、温泉の湧出口を適度な高さに設置すればよく、効果もわかりやすいことから、全国に渡って数多くみられ、人気も高い。
効能としては、落下する湯の打圧力と、熱作用でマッサージ効果が得られ、血液循環が促進されるので、
肩こり、神経痛、リウマチ、腰痛に効くほか、落下する湯の飛沫から発生する陰イオンの鎮静作用も認められている。
打たせ湯に際しては、まず、さっと湯を浴びて軽く入浴したほうがよい。いきなり湯にあたると身体に負担がかかり、かえって逆効果になりかねない。先に身体を温めて温泉にならすといった、準備が必要である。
打たせ湯も、高いもの、低いもの、太いもの、細いものと様々なので、自分の体調を考えて選ぶ。順番としては、細いもの、低いものといった、身体の負担が少ないものから始める。
打たせ湯は
はじめ1〜2分様子を見て、その後は長くても10分程度にとどめる。後は軽く入浴して、身体を休めるとよい。回数は1日2回程度が適当である。
打たせの湯が強いときは、患部にタオル等を当てて調節を行い、無理をしないように心がける。通常は、肩、背中、腰、膝などに当てて、腹や頭は避けた方かよいといわれている。

3.蒸し湯

温泉の熱や蒸気で身体を蒸す入浴法で、高温の湯や蒸気が豊富な温泉場でないと作ることが出来ない。奈良・平安時代では、風呂といえば蒸し湯を指したといわれるほど、古来より親しまれた入浴法で、僧侶などが仏事として行う垢離の一法であったともいわれている。
効能としては、熱や蒸気による発汗から新陳代謝が活発になり、血行がよくなるので、
リウマチや神経痛、疲労回復などによいとされる。また、水圧による身体への負担がなく、温泉の成分を皮膚と吸入によって吸収できるので、呼吸器疾患や頭痛、ひき始めの風邪などにも効く。
蒸し湯には、蒸気のみの蒸気浴と、蒸気と熱を併用した半乾半湿の乾燥熱空気浴の、ふたつのタイプがある。蒸気浴の場合は40〜43度くらいが適温とされ、
10〜30分くらいが適当である。
はじめは短い時間にし、脈拍など自分の体調の変化を知ったうえで、少しずつ時間をのばしていく。入浴が長すぎたり、体調に悪いところがあると、吐き気やめまいを感じる場合があるので、注意が必要。
乾燥熱空気浴は、いわゆる
『サウナ』で、放熱器や加熱管からの空気で、室内を高温に保っている。温度は70〜80度くらいに設定され発汗効果も高いが、蒸気浴同様、体調を考慮した時間内で入浴する。
古来より存在する入浴法だけあって、蒸し湯とひとくちに言っても、様々な型式が各地に存在し、その入浴法も異なるので、現地でよく確認してから利用する。

4.砂湯

蒸し湯の一種ではあるが、多様な蒸し湯の中でも、特徴的かつもっとも原始的な形式と言われている。
温泉のわく場所に穴を堀り、その中へ横たわった上に、温泉熱と温泉成分を含んだ砂をかけて身体を蒸すといった、いたってシンプルな入浴法である。単純といえば単純だが、砂の重力による密着間や、熱の刺激に、他の入浴法では味わえない魅力を感じて、クセになる人も多い。
身体を密閉する砂によって発汗が促され、温泉成分の吸収も高まることから、
神経痛、リウマチ、腰痛、冷え性、肩こり、痔疾、婦人病といった、血液循環がよくなることで回復する症状に、特に効果を発揮する。
寝たまま入浴できる上に、湯よりも熱さを感じないので、長時間入浴してしまいがちだが、思った以上に体力を消耗しやすい。心地よさに身を任せていると、湯あたりしかねないので、
10〜30分の間で、自分の身体の状態を考えて入浴し、回数も1日1〜3回にとどめる。

5.泥湯

泥湯とは、温泉の湧出地近辺で採取される、湯の花などの温泉成分を含んだ鉱泥を温泉にといた湯のことで、ドロドロの湯に浸かったり、その湯を身体に塗ったりする、一風変わった入浴法である。水に比べて5倍の熱保有度を持ち、あまり熱さを感じずに身体を芯から温めることができるので、リウマチ、神経痛、腰痛、むち打ち症などによく効く。ほかにも血圧や血糖値上昇の抑制、副腎皮質の賦活といった働きもあり、その効果は幅広い。
泥は、洗顔やパックなどにも取り入れられ、美肌や痩身をうたうものが多い事から、女性の人気が高いが、入浴できる温泉地は数少ない。泥湯を楽しめる温泉地は、どこも個性があり入浴方法が違うので、各地の方法に合わせて利用する。

6.飲泉

ヨーロッパなどの外国では、入浴よりも飲泉が主体で、早くから専門家による研究も行われてきた。日本でも、胃腸などの内臓疾患に効果の高い温泉地では、古くから習慣としてみられるが、飲泉による幅広い効果への関心が高まりつつある昨今、その効能を取り入れようと、新たに飲泉場を設置する所が増えてきている。
飲泉は、皮膚から温泉成分を吸収する入浴に対して、消化器官からその成分を吸収するため、
慢性胃腸病や慢性胃潰瘍といった、胃腸の疾患には特に高い効果がみられる。胃への作用は泉温によっても異なり、体温より高い湯では胃液の分泌が抑えられ、緊張も弱まる事から、胃酸過多症、肝臓疾患、胆道疾患などによい。逆に冷泉は、胃の活動、分泌作用が活発になるので、胃酸減少、胃酸カタルなどに適している。
胃腸の疾患以外でも、飲泉の際の熱や成分の刺激によって、
体内の毒素や老廃物が排出されるほか、自律神経の調整、ホルモン分泌の促進、血管や内臓の筋肉の緩和など、さまざまな効果がみられ、糖尿病、肝臓病、痛風といった生活習慣病の改善を計ることも可能である。
飲用できる温泉か否かは、湧出口に置かれたコップなどで判断できるが、わからないときは温泉だからといってむやみに飲まず、確認してから飲用した方がいい。最近では飲泉場を別に設置しているところも、多く見られる。飲泉で重要なのは、
湧出口から湧き出たばかりの、より新鮮な湯を飲むことである。温泉の成分は湧出後、時間とともに減少・老化していく。ポリタンクなどの容器に入れて温泉を持ち帰っても、効果は低下している場合が多いので、できるだけ源泉近くでの飲用を心がけたい。
飲用する量は目安として、
1回200cc、コップ1杯くらいが適当。泉質などによって飲みにくい場合は、量を減らすか、薄めて飲用する。回数は1日2〜3回程度から、少しずつ増やしていってもよいが、飲みすぎるとかえって疲労するほか、胃腸や腎臓の機能が低下したり、下痢や腹痛をおこす場合があるので、ほどほどに抑える。
飲む時間帯は、朝・夕の空腹時なら直接胃腸の粘膜に作用するので、効果的である。逆に避けたいのは就寝前で、夜間の多尿や寝不足の原因になりかねない。
細かい処方は各地で異なるので、それぞれ確認して、その処方に従うのがよい。薬と違って、すぐに効き目があらわれるものではないが、副作用の心配もないので、常飲しながら体質改善などを図ることが出来る。

7.吸入、うがい

吸入やうがいといった温泉の利用方法は、外国ではよくみられるが、日本で設備のあるところはごくわずかである。太い管などを通して伝わる蒸気を、吸入口から吸い込むといった方法で、気管支喘息など呼吸器疾患などに大きな効果がみられる。
あらためて吸入を意識しなくても、通常の入浴で自然とその成分を吸収しているもので、特に蒸し湯などは、吸入法を併用しているようなものである。また、入浴しなくても、放射能泉の豊富な温泉地などでは、空気中に絶えずラジウムが放出されているので、その地を歩くだけでも効果があるといわれている。
うがいは、温泉の殺菌効果を取り入れた方法で、重曹泉などが呼吸器疾患によく効くといわれるが、吸入、うがいのいずれも、成分の濃い温泉などでは、逆に呼吸器や神経系統を痛める可能性があり、注意が必要である。

8.浴後の注意

風呂上りは、自分が感じている以上に体力を消耗しているものなので、浴後は充分に休養をとる
外出する際は、
湯冷めによる体調不良をおこさないよう、注意する。

9.湯あたりとその対処法

湯あたりには、大きく分けて二つのタイプがある。ひとつは、長湯などの湯疲れから、だるさやめまいを感じたり、食欲不振に陥ったりすること。この場合は安静にして、その後の入浴を控えれば改善する。
もうひとつは、湯治などの長期療養中で、通常3〜7日目頃起こる場合があるもの。症状としては、全身のだるさ、めまい、吐き気、頭痛、発熱、悪寒、古傷の痛みや炎症がみられるほか、その人が抱えている病気などによっても、反応が異なる。
皮膚病などの場合は
『湯かぶれ』といって、吹き出物や湿疹がおこり、関節の病気などでは、疼痛やしびれなどによる、運動障害をおこしたりする。胃腸病などでは、下痢や便秘がみられ、婦人病では、分泌物が増加したり出血したりといった症状が表れる。
こういった症状は、通常病気回復の前兆とみられ、入浴の回数や時間を制限すれば、2〜3日で次第に快方に向かうが、1週間以上症状がおさまらない場合は、別の原因も考えられるので、医師に相談することを、お薦めする。

10.禁忌症

万病に効くとされる温泉も、その人の体質や症状によっては、効果がないどころか、かえって体調を崩してしまう場合がある。温泉地には通常、適応症とあわせて禁忌症も表示されているので、入浴前に必ず確認しておく。
温泉の効果というのは、入浴をかさねていくことでじょじょに表れてくるものなので、急性疾患には効かず、心臓病、白血病、肋膜炎、紫斑病、てんかん、脊椎カリエス、悪性貧血といった絶対安静を必要とする病気にも向かない。また、ガンや肉腫など進行中の悪性腫瘍や、赤痢、チフス、流感などの感染症、結核性の疾患、栄養不良や極度の衰弱といったものには、逆効果である。
病気以外でも、女性は妊娠の初期と末期は避けたほうがよく、肌の弱い人や高齢者などは、硫黄泉や酸性泉といった刺激の強い泉質の湯には、注意が必要である。特に高齢者は、長湯や高温浴、冷水浴も内臓に負担がかかるので、充分気をつける。



参考文献:からだによい温泉【効能】ガイド 野口冬人著 池田書店

泉質・効能がわかる
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