
泉質と効能 (泉質のカッコ内は、イオン名)
1.単純温泉
摂氏5度以上の温度を有し、含有成分が泉水1リットル中1000mgに満たない成分の薄い温泉を指す。単純温泉という名称から受ける印象とは異なり、成分を多く含んでいるものが多く、医学的にも効果の高さを認められている。無色透明、無味無臭の湯がほとんどで、肌への刺激も穏やかなことから利用範囲が広く、高齢者や肌の弱い人なども安心して利用できる泉質である。
効能としては、神経痛、リウマチ、腰痛、手足のしびれなどの運動機能障害や、皮膚病、外傷、火傷、骨折などの後保養、高血圧、動脈硬化症、脳卒中などの回復期の保養などと、幅広い。日本では豊富な泉質で、温泉場も全国各地に数多く存在している。
2.食塩泉(ナトリウム-塩化物泉)
含有成分は泉水1リットル中1000mg以上とされ、陰イオンの主成分がナトリウムイオンであることから、口に含むと塩辛く、海水の成分に近い。塩分の含有量で、弱食塩泉(100〜500mg)と強食塩泉(500mg以上)に分類されるが、日本では弱食塩泉が多く、全国に幅広く見られる。皮膚に付着した塩分が蒸発を防ぎ、保温効果が高いことから、一般に『熱の湯』と呼ばれている。
湯上り後もずっと身体が温かいので、神経痛やリウマチ、手足のしびれ、打ち身、婦人病、切り傷、火傷などのほか、手術後や病後の保養などに効果があるとされている。飲用すると、胃腸病、肝臓病、便秘などによく効くが、高血圧、腎臓病、体にむくみのある場合などは多量の飲用は控えた方がよい。
3.硫黄泉・硫化水素泉(硫黄泉)
水素イオン、またはチオ硫酸イオン、あるいは硫化水素に対するイオン総量が2mg以上のものをいい、単純硫黄泉と硫化水素泉に分けられる。卵が腐ったような独特の匂いが温泉地一帯にたちこめ、触れた金属を黒ずませてしまう湯は、湧出時は透明であっても空気などに触れるとすぐ黄白色の硫黄沈殿ができる。
単純温泉、食塩泉と並んで日本に多くみられる泉質で、幅広い効能があることから万病に効くといわれている。高温の湯が多く、血管が拡張してよく温まり、鎮痛、鎮痒作用を生むことから、動脈硬化症、気管支カタル、喘息、婦人病、リウマチ、神経痛などに効くといわれる。
また、皮膚の角質を軟化させるので、皮膚病をはじめ、湿疹、吹き出物、美肌作用に効果があるとされるが、刺激も強いため、湯あたりやかぶれの注意も必要。
4.重曹泉・重炭酸土類泉(ナトリウム-炭酸水素塩泉・カルシウムまたはマグネシウム-炭酸水素塩泉)
重曹泉は、陰イオンとして炭酸水素イオン、陽イオンとしてナトリウムイオンを主成分とし、含有総成分を泉水1リットル中1000mg以上とするもの。重炭酸、ナトリウムを主成分とする無色透明の湯は、皮膚の表面を軟化させることから、『美人の湯』といわれ、その効能をうたう温泉地も多い。他に皮膚病や外傷、火傷、神経痛、リウマチ、胃腸病、肝臓病、糖尿病、腎臓結石などに効くとされる。飲用すると、胃の運動を活発化し、胃酸を中和するため、慢性胃炎、便秘などに効果をあげる。
重炭酸土類泉は、陰イオンとして炭酸水素イオン、陽イオンとしてカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを主成分とし、含有総成分を泉水1リットル中、1000mg以上とするもので、他の各種成分を含むものが多く、温度も様々である。鎮静作用があり、炎症を抑えたりすることから、アレルギー性疾患、じんま疹、皮膚病などに効果が認められている。
また飲用すると、利尿効果が高くなるので、糖尿病、痛風、結石などに効くほか、胃腸病、胃酸過多などにもよいとされている。
5.炭酸泉(二酸化炭素)
泉水1リットル中、1000mg以上の遊離炭酸を含有しているもので、温度が上がると炭酸ガスの溶解度が減少するため、冷泉が多い。入浴すると肌に気泡が付着し、飲用するとサイダーのような喉ごしから、『泡の湯』といわれる。
炭酸ガスには、皮膚を刺激して毛細血管を拡張させる働きがあるので、ぬるくてもよく温まり、高血圧症の血圧降下に高い効果がみられる。
飲用では、胃液の分泌促進といった点で、胃腸病、肝臓病、糖尿病、痛風などに効くといわれるが、時間が経つとガスが飛んで効果が減少してしまうので、湧出口から汲んだものをすぐ利用した方がいい。
6.酸性泉
泉水1リットル中、水素イオン1mg以上を含有。硫化水素、緑礬、明礬など含まれる成分により、『酸性○○泉』と呼ばれる。無色または微黄褐色の湯は、殺菌力がとても高いことから、皮膚病の中でも水虫や疥癬、湿疹などに効果がみられるが、成分が濃く、刺激が強いため、皮膚にかぶれやただれを起こすことがある。皮膚の弱い人などは、入浴の際には十分注意が必要である。
7.硫酸塩泉
ナトリウムを含む芒硝泉、カルシウムを含む石膏泉、マグネシウムを含む正苦味泉の三種類があり、無色または黄味がかっている。正苦味泉は飲むと苦味があるが、他はあまり味はしない。
三種とも外傷、火傷、痔疾、手術後の回復などに効果があることから、『傷の湯』と呼ばれ、、「傷ついた動物が湯で傷を癒していた」といった伝説が伝わる所に多くみられる泉質である。
芒硝泉は、泉水1kg中に固形成分1000mg以上を含み、陰イオンでは硫酸イオンが主成分で、陽イオンではナトリウムを含むことから、ナトリウム硫酸塩素というのが正式名称である。飲用すると、胆汁の分泌を促し下痢作用もあるので、肝臓病、胃腸病、便秘、高血圧症、動脈硬化症などに効果があり、『中風の湯』とも呼ばれる。
石膏泉は、陽イオンとしてカルシウムを含み、石膏が溶けている温泉を指す。鎮静と収れん作用が高いので、リウマチ、神経痛、高血圧症、動脈硬化症、痛風などに効果を上げる。飲用では、消化促進、利尿・下痢作用といった効果から、胃腸病、便秘などによい。
正苦味泉は硫酸マグネシウムを主成分とした塩類泉で、血圧を下げることから『脳卒中の湯』といわれているが、日本では数少ない。動脈硬化の予防、麻痺改善などのほか、神経痛やリウマチ、手足のしびれなどにもよい。飲用すると、肝臓病、胃腸病、痔疾などに効くとされる。
8.鉄泉
泉水1リットル中、鉄イオン20mg以上を含むものをいい、炭酸鉄泉と緑礬泉に分類される。湧出時は透明だが、空気に触れて酸化をすると錆色に濁り、褐色の沈殿物を生ずる。
タオルを入れると赤く染まってしまうほどの湯は、貧血症の他、更年期障害、リウマチ、神経痛、湿疹などに効果がある。飲用は、特に貧血症に効果があるが、湧出口の新しい透明な湯を飲んだ方がよい。
9.含明礬・緑礬泉(含、アルミニウム泉)
泉水1kg中に含有成分が1g以上あり、陰イオンとして硫酸イオン、陽イオンとしてアルミニウムを主成分とするものをいう。アルミニウム・鉄(U)-硫酸塩泉、または含鉄(U)-アルミニウム-硫酸塩泉などがあり、神経痛やリウマチ、疲労回復などに効くほか、粘膜の炎症を抑えることから、皮膚病や多汗症、結膜炎などの眼病にもよいとされている。『眼の湯』とうたわれる温泉地では、明礬泉の泉質が多くみられる。
10.含銅・酸性緑礬泉(含銅-鉄泉)
酸性-含銅・鉄(U)-硫酸塩泉をいう。鉄泉に銅が含まれているもので、ほとんどみられない泉質。登別、玉川、草津といった温泉地の一部の源泉に含まれている。
11.放射能泉
一般的にラジウム泉といわれるが、泉水1kg中にラドン100億分の20キュリー以上含む温泉のこと。湧出後は、空気中にラドンがたえず放出されるため、できるだけ新鮮な湯を利用する事が大事で、中でも吸入が一番効果があるといわれている。温泉地にいるだけでもラジウムが自然吸入され、万病に効くといわれるほど幅広い効能があるが、特に『痛風の湯』として知られたところが多い。鎮静作用があることから、リウマチや神経痛のほか、血圧降下、更年期障害、不妊症、ノイローゼなどにも効果を上げる。
放射能といっても、ラドンの量はごく微量なので、健康への影響は心配しなくてもよい。
参考文献:からだによい温泉【効能】ガイド 野口冬人著 池田書店